五島先生,工藤先生とも,前庭性片頭痛と脳幹性前兆を伴う片頭痛はまったく同一ではないが,オーバーラップがあるという結論を述べておられる.オーバーラップ部分を大きくとるか,最小限にするかで,両疾患が同一であるかどうかに関わるということであろう.後藤先生はメニエール病など末梢前庭によるめまい疾患と片頭痛の共存についても論じられた.
片頭痛性前兆のうち,典型的前兆,すなわち,視覚性前兆,感覚性前兆,言語障害は大脳皮質の皮質拡延性抑制(cortical spreading depression: CSD)によって引き起こされることが確実である,脳幹性前兆でみられる神経徴候が,脳幹部においてCSDのようなメカニズムが発現しているのか,脳幹部の虚血であるのか,あるいは他のメカニズムによるのかは,まだコンセンサスが得られていない.末梢性前庭の障害が,脳幹になんらかの作用をして,脳幹性前兆を来し得るとすれば,末梢性前庭疾患,前庭性片頭痛,脳幹性前兆を伴う片頭痛は同じ土俵上の疾患群で一連のものと理解することができるかもしれない.
※本企画はテーマに対して,あえて一方の見地に立った場合の議論であり,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません.
・前庭性片頭痛は脳幹性前兆を伴う片頭痛と同一である/五島史行
・前庭性片頭痛は脳幹性前兆を伴う片頭痛と同一ではない/工藤雅子
・総括/竹島多賀夫