「サマリー」めまいや前庭症状を伴う片頭痛例は,臨床上意外に多く存在することは経験からよく知られているが,その実態についてはいまだ確定されていない.国際頭痛分類第3版beta版(ICHD-3 β )ではこの病態を説明できる疾患として「1.2.2脳幹性前兆を伴う片頭痛(Migraine with brainstem aura)」と「A1.6.6前庭性片頭痛(Vestibular migraine)」の2つが記載されている.いずれも多彩な症状の組み合わせからなり,共通する病態生理を有することが予想されるため,両者を完全に分けることは困難と思われる.しかし,あえてICHD-3 β の診断基準に忠実に,この2つの疾患の成り立ちについて考えてみた場合,診断する際の根拠となるべき臨床症候やそれらの出現時期,診断に至るまでのプロセスは明らかに異なっており,両者は別の疾患と考えるべきである.
「片頭痛と「めまい」」「めまい」を訴える片頭痛患者に遭遇することは日常診療上珍しくなく,片頭痛患者に伴う「前庭機能障害」の存在はずっと以前から議論されてきた.
※本企画はテーマに対して,あえて一方の見地に立った場合の議論であり,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません.
・前庭性片頭痛は脳幹性前兆を伴う片頭痛と同一である/五島史行
・前庭性片頭痛は脳幹性前兆を伴う片頭痛と同一ではない/工藤雅子