Onco-Cardio-Coagulation
担がん高齢心房細動患者の抗凝固療法
掲載誌
Cardio-Coagulation
Vol.9 No.4 48-53,
2023
著者名
池田 隆徳
記事体裁
連載
/
抄録
疾患領域
循環器
診療科目
循環器内科
媒体
Cardio-Coagulation
心房細動(AF)とがんはともに脳卒中,血栓塞栓症,死亡のリスク要因とされている¹⁾ ²⁾。現在の不整脈診療ガイドライン³⁾ ⁻⁵⁾は,AF患者の管理として,脳卒中や血栓塞栓症などのイベントの発現を防ぐために直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)またはビタミンK拮抗薬(ワルファリン)を用いた抗凝固療法を推奨している。しかし,活動性がん患者においてAFを合併した場合,抗凝固療法が考慮されるものの出血リスクが高くなることが報告されているため⁶⁾ ⁷⁾,治療に難渋することが多い。
いくつかの臨床試験のサブグループ解析⁸⁾ ⁹⁾やメタ解析¹⁰⁾において,がんとAFを併発している患者での抗凝固療法のあり方が検討されている。その内容としては,いずれもが抗凝固療法を行うことのメリットを報告しており,特にDOACがワルファリンに比べて出血,血栓塞栓症の発現率が低いことを示している¹¹⁾。しかしながら,多数例において前向きに検証した研究はなく,さらに高齢患者のデータについては限られていた。
ANAFIE Registryは,日本における75歳以上の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者を対象とした3万例を超える前向き多施設観察研究である¹²⁾。最近,この大規模なリアルワールドデータのサブグループ解析として,NVAF高齢患者に対する活動性がんのもたらす影響,血栓塞栓・出血イベントの発現に対する抗凝固療法の関与などについての研究結果が報告された¹³⁾。本稿では,この論文を引用しながら,担がん高齢NVAF患者の抗凝固療法の意義について概説する。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。