ドライアイリサーチアワード受賞論文解説
好酸球は脂質代謝酵素12/15-リポキシゲナーゼを介して角膜創傷治癒を促進する
掲載誌
Frontiers in Dry Eye
Vol.17 No.2 30-32,
2022
著者名
小川 護
記事体裁
抄録
/
連載
疾患領域
眼疾患
診療科目
眼科
媒体
Frontiers in Dry Eye
Key Words
リポキシゲナーゼ,角膜創傷治癒,好酸球,メタボローム解析,脂質代謝物,脂質代謝酵素
脂質は炎症応答のプロセスのなかで生体防御や恒常性への回復に必要である¹⁾。12/15-リポキシゲナーゼ(12/15-lipoxygenase:12/15-LOX)は局所的に脂質メディエーターを産生する酵素であり,抗炎症や炎症収束作用の性質を多くの疾患モデルにおいて有する²⁾ ⁻⁴⁾。本研究で着目した角膜上皮は眼表面の主要成分であり,常にストレスに晒され創傷が発生し,それを治癒して恒常性を維持している⁵⁾ ⁶⁾。創傷治癒遅延と関連する角膜輪部機能不全は,幹細胞の喪失が外傷や炎症の浸潤によって起こるが,重症例は治療が困難であり角膜創傷治癒のよりよい理解と,角膜創傷治癒を促進する治療法の探索が望まれている⁷⁾。一方,好酸球は寄生虫感染への免疫応答やアレルギー反応にかかわる細胞であるが⁸⁾ ⁻¹¹⁾,当研究室では好酸球が12/15-LOXを高発現し,急性腹膜炎の炎症収束過程で局所的に脂質を産生し寄与することを報告した¹²⁾。また,好酸球は腸炎においても防御的に働くことが示されている¹³⁾。そこで,好酸球は免疫防御的な機能に加えて上皮の創傷治癒過程も調節するかどうか本研究を行った。
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