緊急寄稿
日本国民はN95マスクを選択すべきー米国はN95マスクを全国民に無料で配布ー
掲載誌
インフルエンザ
Vol.23 No.1 51-54,
2022
著者名
菅谷 憲夫
記事体裁
抄録
疾患領域
呼吸器
/
感染症
診療科目
一般内科
/
呼吸器内科
媒体
インフルエンザ
米国政府は,4億個のN95マスクを無料で米国民に配布することを決定した¹⁾.
N95マスクをできるだけ多くの国民が着用して(universal masking),オミクロン流行を抑えようという,米国政府の試みである.
オミクロン株の流行は,今までのCOVID-19,特にデルタ株とは,いくつかの異なる面がある.第一に,従来株やデルタ株との大きな違いは,オミクロン株は麻疹並みの感染力があると考えられる点である.オミクロン株の感染力はきわめて強く,デルタ株の基本再生産数が,水痘並みの8とされていたが²⁾,オミクロン株では,その数倍はあるとされるので,麻疹に近いと考えられる(麻疹では,免疫がない集団に1人の発症者がいると,12~14人の人が感染する³⁾.麻疹と同等の感染力をもつウイルス感染症が日本で流行する状況は,COVID-19ワクチンのブースター接種なしでは,流行が拡大するのは当然である.麻疹では,マスクは効果が低いことが知られているが³⁾,全国での記録的なオミクロン株流行の勢いを見れば,日本人のサージカルマスク着用も,今までのような効果は期待ができないと思われる.
第二に,オミクロン患者では入院のリスクは低い点である.英国からの報告では,救急外来受診または入院のリスクは,オミクロン患者ではデルタ患者のおよそ半分と報告された(Hazard Ratio 0.53,95% CI:0.50~0.57)⁴⁾.他の報告もオミクロン患者は症状が軽いとし,日本のマスコミも軽症と報道しているが,対象患者は,大部分が若年成人層であることに注意が必要である.最も重症化が懸念されている高齢者で軽症かどうかは,さらに検討が必要である.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。